僕たちは、砂ネズミの穴ぐらの襲撃に成功し、見張りを手早く倒した。
その後ろに広がる遥か彼方の砂漠地帯。
僕らは靴底から侵入する砂に気をとられながら続く、廃屋を一件一件しらみつぶしに調べあげ、中から争う声の聞こえる廃屋をみつけた。
そこから聞こえてきた声は、以前聞いたことのあるドーターで出逢ったリョウイチのものだった。
僕らは息を潜め、漏れてくる声に聞き耳をたてる。
「どうだ、マサト、いい加減に観念したらどうだ?」
どうやら、リョウイチがマサトを責め立てているらしい。
足に力をいれないように気をつけながら、扉がわりの布の隙間から中の様子を伺う。
リョウイチは剣を抜き、マサトに突き付けている。
「...貴様の革命などうまくいくものかッ!!オレたちに必要なのは思想じゃない。食いものや寝るところなんだッ!それも今すぐになッ!!」
しかし、そのリョウイチに恐れもなさずマサトは、口汚く罵ると剣を腰から勢い良く引き抜いてリョウイチに向けた。
まさに一色触発。
いますぐ自由な生活を送りたいマサトにリョウイチはそれでも信念を語る。
「お前は目先のことしかみていない。重要なのは根本を正すことだ!」
マサトは、そのリョウイチの言葉をフッと鼻で笑ってみせた。
「それが貴様にできるとでも?無理だよ、リョウイチ。貴様には絶対に出来ないッ!」
リョウイチは、剣をマサトの首につきつけたまま距離を縮めるためににじりよった。
「言いたいことはそれだけか?マサト、おわかれだ」
その言葉を皮切りに、ふたりは身構えマサトが先に剣をリョウイチへとふりかざす。
それを、リョウイチは寸前で避け、懐に入りマサトの腹を突き刺した。
マサトの非常な呻き声だけがこだまする。
「うあ...う...」
そして、その言葉を最後にリョウイチは腹に突き刺さっていた剣を軽く抜くと、マサトが音と共に誇りまみれのカーペットに崩れ落ちた。
ショウやエイシ、ユンギョンはついに我慢し切れず廃屋の中に入った。
「リョウイチ!!」
ショウは、刺し殺されたマサトとリョウイチを交互に見比べ非難の声をあげる。
廃屋の隅には見張りの騎士だろうか、数人の死体がころがっていた。
そんななか、ユンギョンが突如、声をあげた。
「侯爵様ッ!!」
廃屋の隅に横たわる侯爵の姿を見つけたのだ。
ショウ、エイシ、ユンギョンで入り口を塞ぐ。
リョウイチは剣を握りしめたまま叫んだ。
「動くなッ!」
そんなリョウイチの態度に、ユンギョンが黙っているはずがない。
ユンギョンはひとり、身をのりだして叫ぶ。
「貴様ッ!!!」
状況的に見れば、騎士見習いとはいえ人数で上回っている三人。
しかし、侯爵はウィ−グラフに近い場所にいる。
そのため、エイシはユンギョンをたしなめた。
「よせッ、ユンギョン」
そのエイシの姿勢にリョウイチもほんのすこしだけ警戒をといて言葉を並べた。
「侯爵は無事だ。イグーロスへ連れて帰るといい」
ショウは、リョウイチの言葉に動揺を隠せず、思いっきり聞いた。
「...どういうことだ?」
リョウイチは淡々と説明する。
「侯爵殿の誘拐は我々の本位ではない。我々は卑劣な手段は使わないのだ。...このまま私を行かせてくれたら侯爵殿はお返しするが。どうかね?」
その提案に、ユンギョンは怒りを押さえようともせずいきりたった。
「ふざけるなッ!おれたちにかなうとでも思うのかッ!」
乗り出すユンギョンをエイシは今度は手も使い、制止する。
「よせ、ユンギョン。彼は本気だ」
僕らは廃屋の隅を壁に向かって右回りに歩き、侯爵のほうへとよっていく。
リョウイチは、反対に扉のほうへと右回りに小走りにかけていった。
「う...う、う...」
後を追おうとしたユンギョンが、侯爵のうめき声に追うのを断念した。
めくれあがった布のすきまから、遥か彼方の砂漠まで目をこらしてみつめたが、もう
すでに姿はみえなくなっていた。
とりあえず、一行はミカミ候の身柄を安全なイグーロスまで運ぶことに決めた。
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