言い訳じゃなくて、本気で彼女の熱に侵されてる気がします。











unstable*



















「キヨー!プール行くよ−」

その声は毎日同じ、練習終了間際に堕ちてきて南を動揺させる。
おかげで声も震える始末。
隠れてうまくごまかしてるつもりな千石に恨みがましい視線を向けて心の中だけで呟く。


くすくす笑ってる千石、後で覚えとけよ!


「じ...じゃ、これで練習終了」

「つかれさましたっ!」

皆の元気な声がテニスコート中に木霊して、振り返るとが木の下で手振っていた。
よ!南!って元気な挨拶に、思わず顔が緩みそうになるのを抑えてすましたのに、それを悟ったのか千石がまた後ろから肩を叩いてきて意味深に笑った。


「よかったね、南ちゃん」


べ...別に。とはっきりしない声で返す。
その間にもすたすた千石は前を歩いてのそばにいった。



。着替えてくるから待ってて」

「おっけー」

一言二言のやりとりが交わされて、千石は楽しそうに部室へと向かっていった。
南もその後に続く。
暑い日差しの中、顔を上げたはけだるそうに空を見上げせかすように告げた。

「南、キヨに早くって怒っといて。アイツ着替えんのめちゃくちゃ遅いんだもん」

それに手ぶりで答えを返す。
ホントはまだまだ話したいと思ったけど上手くはなせる自信ないし、緊張が最高潮に達しそうだったのでそのまま通り過ぎて部室の中に入った。


中では、の危惧通り千石がだらだら室町と話をしていた。
まったくもってどうでもいい内容。
またせてまでする話じゃないだろう、と注意しようとして止めた。

言えば、また千石がへんな笑顔でみるに決まってる。
南ちゃん、が気になるの?とかなんとか聞いてきて、あぁそれ考えただけでうっとおしい。
俺は別にのことをどうとか思ってるわけじゃない...はただ千石の幼なじみっていうだけで特別な感情なんてないし...そりゃかわいいとは思うけど。
でも、恋愛対象としてみてるわけじゃ...ないはずだ。
言い聞かせるように、唱えた言葉をかみくだしてると千石のでかい声が耳に響いた。

「そうだ、室町クンも行く?プール一緒に」

南は思わずふりかえった。
室町の反応を伺うというよりは、必然的に向いてしまったという方が正しい。
ともかく室町は、千石の誘いに一定時間悩んだ後、答えを出した。

「今日は、いいです。ちょっと用があるんで」

軽く断った後輩が名残惜しいのか、千石はいかにもうなだれた声を出してロッカーにしなだれかかる。

「そっかー、じゃぁしょうがないねー、惜しいなぁ。ってかなりスタイルいいんだよー」

うっとりと瞳を閉じて思い出すようなそぶりをしている千石。
浮遊していた瞳が、千石とぶつかる。
瞬間的に逸らした視線の意味を悟ったのか、千石がやっぱりニヤニヤ笑いながら名前を呼んだ。

「南ちゃーん?何?一緒に行きたいの?俺からに話してあげよっか?」

もちろん南は激しく慌てた。
それが千石の策略だと分かっていても、動揺を隠すことが出来なかった。
知らず知らず赤くなった顔と練習終了をつげたときよりもうわずった声で、南は半ば叫ぶように吐いていた。

「いやっ...お...俺は...い...いい...」

期待したとおりの動揺っぷりに、千石は更に追い討ちをかけて楽しもうと、部室の近くにいるであろうに向かって叫ぶ。

ー、南ちゃんと途中まで一緒でもいいよねー」

そんなことを言われて南があわてないはずがなかった。
一緒になんて帰れる状況ではない。
千石をとめようと呼びかけた瞬間に、の声がうまいことかぶさる。

「はぁ?そんなのいいに決まってるじゃん、」

壁一枚を隔てて聞こえたらしい返答に、帰れるような心境じゃないとうなだれながらも、嬉しさは隠すことができなかった。

こうして南は、何も感じてない素のと弱味を握ったと喜ぶ千石の間でおもしろおかしく遊ばれてしまうことになるのだった。
























追記**



ちゃんに恋する山吹の南ちゃん。
これはまだ、跡部とが付き合う前の話ですね。
でも、跡部とはすでに出会ってて猛アタックを受けているくらいの設定です。
だから、かなり報われない恋をしているんですよ、出会った時点で既に。
あはっ、かわいそう。
ところで、千石はちゃんに対して本当に幼なじみ以上の感情は抱いてないんです。
ただ、千石は根っからの女ずきなのでちゃんの可愛さをまわりに自慢したりはするんですけどね。
まぁ、千石についてはこれから幼なじみだと知った跡部に南と同じような誤解をされてヤキモチを妬かれるんですけど。
(更に言えば、に近付くなとかおどされる)

image TRF )『BOY MEETS GIRL』
浜崎 あゆみ 『July 1st』




up date2003.09.23