白昼夢だったのか...。
今となっては分からないけれど。
その時、私は確かに新しい道を進んでいた。
白い炎が見えた。
手招きして呼んでいる光。
その光を守りたくて。
その光を守ることが役目で。
でも、いつからかどうしてか、望んでいないことばかりやっていた。
変わってしまわれた...?







白き石は風に吹かれて









いや、違う。
変わったのは、ブラネ様じゃない。
私自身が、変わったのだ。
泣いている...?
鞘におさめてある剣が、手の冷たさに一層冷めたさを増す。
聖剣『セイブ・ザ・クィーン』。
その美しい名に相応しく、蒼に輝くその剣は今までに数えるほどしか抜かれたことがない。
美しく、でも残酷に人を切り刻む剣。
尖ったその刃が、自分と重なる。
助けてくれたのは、王妃様ー。
その王妃様にお仕えしようと思って、剣の腕を磨いた。
そして、王妃様はそんな私に、この剣をくれた。
「祝いじゃ。受け取るがいい。」
そう言って差し出されたこの剣。












この剣で、守ろうと決めた。
それなのに。
王妃様を...。
ブラネ様を救うことが出来なかった。
だったら、せめてと。
王妃様が望むことのために、剣をふっていたのに。
守りたかった、守らなくてはいけなかった光が、消えようとしている。

アレクサンドリアの希望が消えようとしている。
ガーネット様...。

貴女を守りたい。
王妃様の命に逆らう形になっても。

ベアトリクスは、手に全神経の想いを込めて。
感情を込めて、祈りを紡ぐ。
「空の下の我が手に、祝福の風の恵みあらん!ケアルガ」
何度も立て続けに放たれる光。
でも、それでも。
ガーネットの身体からは一筋の光さえも洩れてこない。
脈動を感じさせないその身体は、硬直しきって、動くことも出来ない。
それでも、願いのために言葉を紡ぐ。
「空の下の我が手に、祝福の風の恵みあらん!ケアルガ!」
魔法と呼ばれるその力を使い過ぎて。
精神力が途絶えがちになって、それでもできる限りの想いを紡ぐために。
自分のためだけではなく、ガーネットを待つ国民のために....。













最後の。
一握りしかないその力を振り絞って、想いを紡ぐ。
泣叫ぶような声で、想いを託す。
たった一筋の光に。
「空の下の我が手に、祝福の風の恵みあらん!ケアルガ!!!」
手から光が溢れる。
ガーネットの体中を照らして...。
そして、その力も。
体内の中に、消えていく。












とたんに、ガーネット様の体から光が溢れた。
こぼれていくその光は、まるで生まれたばかりの赤子を産み落とすよう...。
体中が輝き出す。
彩りを添えて、光が混ざりあい、それが音色なっていく。
静かに音を奏で、そして消えた。










2001.02.23