sora |
...ジダン!!
ガーネットは、バルコニーから身を乗り出して声の方を見つめる。
そこに立っていたのは...。
もう、会えないと思っていた...。
金色の髪の陽気な少年...。
「ジダン....っ!!」
声にならないよ...。
会えないと思ってた。
いる...!
動いてる...。
しっぽが、ふさふさと揺れている。
間違いない!!
ジダンだ!!
もっともっと近くで...。
ちゃんと確かめたい!!
ちゃんと感じたい!!
青みがかった白のドレスをたくしあげるとガーネットは駆け出す。
ジダンまでの道のり...。
扉の前で、2人の騎士の影が動く。
ベアトリクスとスタイナー。
見つめる、2つの影。
ガーネットは、2人を見つめると押し退けようと身構える。
2つの影は同時に微笑んで、重厚な飾りの施された扉を開く。
ガーネットはそのまま城の中を駆け回る。
階段、通路、誰にも構ってはいられない。
ジダンに繋がる全ての道を通り抜け、外に出る。
青みがかった白のドレスのすそが人々の下敷きになる。
大切な服...。
でも!!
気にしてられない。
通りには、大勢の人だかり。
押し退け、駆け出すその姿に人々は足をとめる。
「女王様だ!!」
町のざわめきは一段と大きくなる。
ぶつかって、大切な王位継承の紋章が入ったペンダントがはねとばされる。
地面にかしゃんと音をたてて落ちた銀のペンダント。
アレクサンドリアの紋章がはいった・・・。
ガーネットの宝物。
2人のお母さんの表情が浮かんでは消える。
お母さま...っ!!
母親の顔を思い出す。
自分の思った通りに生きなさい、とペンダントを託してくれたお母さま...。
守り抜いてきたものだけど、...。
大切って分かってるけど...。
でも!!
それよりも...!!
ガーネットは、再び駆け出す。
ジダンの元へと...。
髪の白銀の髪飾りが揺れる。
...っ!!
ガーネットは勢い良く、揺れている白銀の飾りをはがしとる。
投げ捨てて、ひとの波をかき分けて...。
舞台の上にその人影をさがす。
見えた!!
「...!!」
何か言いたいのに...。
言葉が思い付かない。
出てこない...。
歯ががくがくする。
「よっ!!」
手をあげて笑ったジダン。
心配してたのに...。
もう会えないと思ってたのに...。
「・・・っばか!!」
言葉と心が反対に動く。
ダガーは駆け寄るとジダンに思いっきり抱きつく。
「逢いたかった!!逢いたかったんだよ?」
ダガーは、涙声でばしばしとジダンの胸元を叩く。
「いってーな。でも、いいか。ダガーに触れられてるからv」
ジダンは言葉すくなに囁く。
そして、そのままダガーの身体を強く抱きしめた。
観客席では2人を知る友人たちが拍手で見つめている。
その様子を、ダガーが振り切る形で駆け出したバルコニーで、ベアトリクスとスタイナーもみていた。
そして、2人は微笑むとベアトリクスの蒼い剣を天空に向かってかかげる。
アレクサンドリア城の大きな剣は光り輝き、天は、それを微笑ましそうにみつめていた。
2002.07.27