ほんとうに、こんな世界があるんだって思ったの。

今までは、本の中。

沈みゆく太陽。

伸びる影。

広がる、赤と黄色の合間の世界。


その中に浮かんで、言葉では言い表せない形が目の前に立ちはだかる。

でも、そのとき。


わたしはほんとうに、生きてるんだって知ったような気がする。



知れた気がする。








陽と陰。







いままではずっと、島の中にこもりっきりで。
外に出たことなんて、なかったのよ。

そう、たしかに色とりどりの世界。

エメラルドグリーンの海。
白い飛沫。
薄茶の砂浜。
緑の絵の具を塗りたくったような葉っぱ。
その中を原色の赤が、更に色づけしていく。

まるで、闇なんか訪れたこともない、そんな景色。

幻想的で、書物では楽園とあらわされそうな世界が広がる。


だから、ずっと私は外の世界に憧れて。
生きてる感覚がしない、その楽園を。
飛び出したかった。


目の前に広がるのは、オレンジに染め上がった海。

沈みゆく太陽が。

オレンジに沈む、遺跡を伸び上がった影だけで引き止めようとしてる。

後ろには、黄色の大きな乗り物。
草を夢中でほおばっては、ちょこちょこと歩いたりしてる。
ときどき、出る鳴き声もはじめて聞くもので。


こんな景色をみて、はじめて。

楽園とは違う景色にであってはじめて。


この世界が、色とりどりの世界だってしることが出来たの。


息をつくことができたの。



同じ色(せかい)じゃ、生きてるか死んでるかも分からないくらい感覚が麻痺してたのよ。
同じ世界(いろ)ばかりじゃ、目を瞑っても劇的な変化を期待出来なかったのよ。




死へと向かう旅路。

それは、陽と陰の引き合い。

私の色が変化してく。

変わってく。













後書き


なんか遺跡紹介のテレビみてたら思い付いた。
ので、はじめのほうちょっとビミョー。
でもまぁ、すきなかんじですよ。
意外とね。

2002.10.14