言葉よりさきに手がふれてた。











r     ain-bow














頭の中さんざんぐるぐるして、考えてばっかりいた。
すきって言い続けてくれると思ってた。
だって、言ってくれてたから。
それが永遠に続くって思ってた。
返事しなくても、「大切」って言い続けてくれるって思ってた。


そんなの、決まってないのに。




もう逢いに来ないって言われて、すきだったことに気付いた。
一緒にいて欲しいのは誰かってことに今更ながら心が痛くなった。

気持ち伝えようとケータイを開いた。
だけど、ふいにすごく怖くなって、ボタンが押せなかった。

ねぇ、もう遅いかな。
遅いよね。

「すき」っていうのもうダメだよね?
ずるいよね?

でも、一度だけ伝えさせて。



そしたら「すき」なんて言わないから。
封印するから。


でっかい校門をくぐり抜けて、そそくさとテニスラケットを持った人たちの後をおいかけた。
嫌が応にも心拍数があがっていく。

ボールの音が聞こえて、また泣きたくなった。

喉がからからと音をたてるように水を欲しがってる。

名前を呼ぶのすら唇が震えた。

ごくんと飲んだ息にあわせるように、空に高く響いた低い声。


「...?」


視界に飛び込んできたのは、逢いたかったアイツ。

涙をこらえながら、気付けば距離を縮めて身を投げ出してた。
くっつけた身体がすごくあったかくて安心する。


「好きなんだ...跡部のことが...すきなんだ...」


言葉がするすると自然にこぼれていく。
寄せた身体に、言葉と同時に手がからみついてきて肩に顔を預けられた。
ふれた部分があつくて痛い。

「本気かよ...?」

しぼりだすようなその、聞いたことのない声に驚いて顔をあげる。
アイツは顔をうずめたまま小刻みに震えてた。

自信過剰だったアイツのそんな姿に、きゅんとココロがしめつけられて手を回した。
伝わってきた。
自信なんてないけど、断言なんてできないけどでも跡部はあたしをまだ好きでいてくれてる。
きっと。

同じ熱が体中を充たしてく。






「...信じてよ?」







ぎゅっと腕に力を込める。

「信じるって、つーか騙されてたとしても信じちまうって」

泣き笑いのような声が響いてよりいっそ強く抱きしめられた。
知らないうちに頬を雫が伝っていった。
空には、雨上がりの虹が煌めいていた


































追記。

なんかまともになったかも!?
っていうか。
lenって言ったらやっぱこんな乙女チック小説っしょ?
あ、題名は前回のと対になってます。
というか、それを考えてつけたんだよね。



image song  倖田 來未『1000の言葉〜オーケストラバージョン〜』





up date:2003.05.06