心配ばっかりさせるくせに。
きっと、浮気だって。
セックスフレンドだってたくさんつくるくせに。

テニスみたくひとつにはしぼれないくせに。










セックスフレンド。 ちゃんのばあい。ー











ちゃん〜〜〜〜〜〜〜vvいいでしょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜いいでしょ〜〜〜〜〜〜?」


そのノーテンキな、欲望丸出しの声に。
あたしは、イラダチと切なさを感じながらも強気ではねのけるフリをする。

「も〜〜〜〜〜千石うっとおしい」

ほんとは、甘えてくれて嬉しいよ。
あたしのところに来てくれて嬉しい。
一番に、あたしを選んでくれて嬉しい。

それが、たとえセックスだけが目的でも嬉しい。



「ね〜〜〜〜〜、ちゃんってば〜〜〜〜〜〜」

諦めないさま、おねだりしてくるさまもかわいいの。
コツ掴んでる、なんてヤツ。



ちゃ〜〜〜〜〜〜〜〜ん」



もう、あたしだけしかいないって、瞬間でも思わせるんだから酷いオトコ。
あたしは、千石の片手一杯のうちのセックスフレンドのひとり。
何人かの、千石にとっては一杯いるうちのひとりなのに。
最終的には、肯定の返事しかできない。
知らず知らずうなづいてるの、それがあたし自身を苦しめてるんだって痛いほど身に
染みて分かってるのに。




「...分かったって」

そうして、また。
キーを渡して、同じ過ちを繰り返してはひとり泣きたくなって。

「先行ってて」




見送った背中、背後にはたくさんの女のコの視線。



...また今日も、お呼びだしがかかるに決まってる。




案の定、呼び出しを喰らった中庭。

袴姿で防具をつけたあたしをいいことに、ファンのコたちはあたしを取り囲んでいつもの通りまた、始める。

「ねぇ、あんたさ...」

その中でも中心的存在らしい女のコが口を開いた。

「本気で千石くんがあんたなんか相手にしてるって思ってンの?」

「あんたなんてお遊びに決ってンじゃない」

「ただの性欲処理なんだから」

実に攻撃的な言葉ばかりぽんぽんと、吐いてくれて
きっと、あたしが泣いたりすればご満足なんだろうけど。

残念ながら、あたしはそんな言葉じゃ動じないよ。

だって、千石とセックスできなくなるほうが辛いもの。

「ふ...分かってないなぁ...あたしと千石はただの『セックスフレンド』なの。あんたがさっきいったようにあたしも千石もタダ『性欲処理』してるだけ。...お遊び?いいじゃない、別に」

そして、あたしはファンのコたちよりも自分に強く言い聞かせる。

「セックスしたいだけなんだから」

それは、自分の中に眠る気持ちを押さえ付けるためのウソ。



ほんとは、すき。
普段は『ちゃん』って『ちゃん』づけでちょっとおどけた感じなのに。
イきそうなときだけ、『』なんてコツつかみすぎなのよ。
『おっぱいおっきぃからすき』って言うのも、ひどい。
そんな言葉言われたら、嫌が応にも期待しちゃうじゃない。

でも、所詮はセックスフレンドなんだって帰るとき思い知らせるくせに。
どんなにすきって言っても、それはおっぱいだけのくせに。

ひどいよ。
大勢の中の一人って、教え込んだのは千石なのに。
急に『ちゃん。俺と付き合って』なんて虫が良すぎる。
女のコ、大好きなくせに。


心配ばっかりさせるくせに。
きっと、浮気だって。
セックスフレンドだってたくさんつくるくせに。

テニスみたくひとつにはしぼれないくせに。

バカ。
好きだよ、バカ。
自分がやんなるくらいすきだけど。

でも、あんたの気持ち図り知るの怖いから答えないわ。

振り向かないわ。

あんたがもっと、あたしに惚れるまで。
あたしが強くなるまでずっと断るわ。

じゃなきゃ、あたし。
あんたと対等になれないもの。













後書き



女のコ視点。
セックスフレンドであろうが、なんであろうが、純砂スキなのですよ。
こういうの、わかるなぁ。



2002.10.13