「〜〜〜〜〜!」
パタパタと、廊下を走ってくる音が聞こえて。
友達二、三人が好奇の瞳であたしをとりかこんだ。
やさしさのかけら。
「千石クン、また三年の先輩と出かけたって一年のコが言ってたよ」
「先週は、六組の林さんとだし」
「水曜日は、他校の高校生といちゃついてたって」
「、カワイソー」
「ホントだよ、あんな浮気性の彼氏、よく捨てないよね」
はじまった...。
みんな、あたしを心配する振りしてホントはチャンス狙ってるくせに。
あたしをみる瞳が言ってるじゃない。
『早く別れなよ』
手を出すコも出さないコも同じなクセに。
あたしにそう言えば、アイツが喧嘩すると思って言ってるクセに。
「だから?」
あたしには、そんなの関係ない。
アイツが女のコ、大好きなのは昔っからだし。
それに、断り切れない妙な優しさ持ってるのも知ってるよ。
優しいからでしょ。
出かけようって言われたり、ちょっと寂しそうな顏されると手を差し伸べちゃうのは。
知ってるよ。
そんなところ含めて好きになったんだもん。
「『だから?』って、ムカつかないの?」
友達の落胆したような声が響く。
アテが外れて残念って思ってるでしょ。
「うん、別に」
すんなりと歯切れよく答えたあたしに、揺さぶりをかけるための言葉が廊下を駆け抜けていく。
「あ〜〜〜、もう呆れてるって?」
「ううん、呆れてなんかないよ。千石のこと信じてるから、気にならないよ」
それは、本音。
どんなに女のコにアイツが優しくしても、なんにもないって知ってるから。
たとえ、ふたりっきりだったとしても平気。
みんな、優しいのは不安になる材料だからパスって言うけど。
あたしは、そう思わない。
みんなに優しい千石がすき。
気張ってるわけじゃなくて、辛いわけでもなくて。
ココロからそう思う。
だから不安なんてない。
だって、気持ちはいつでも此処に在るって分かってるから。
追記。
これ、lenはいつでも思ってますよ。
lenは、ほら彼氏を信用し過ぎてヤキモチ妬けと言われるくらい淡白なので。
でも、すきなんですよ。
すきだからこそ、lenは信じるんですよね。
その人のことを。
やっぱり、lenは。
あれですか、普通の女と違いますか?
まぁ、いまはあれなんですけどね。
いづちゃんファンたちにヤキモチを妬かれまくってるとかいうビミョーな立場なんですけど。
2002.10.22