ショートカットに、荒っぽい言葉。
全校集会では、必ずあぐらかくせいだったりするだろうけど。
まったく女としての自覚なし。だし、まわりもそうみてる。
だから、コレクションしてる香水の中で、身につけられるのは甘さなんて微塵もないメンズのブルガリ。
その弾け飛んでしまうほどすっきりとした匂いは、レディース向けの香水たちの甘ったるさの影に隠れてしまうくらい、ほんとに細やかで。
メンズとは思えないくらい繊細で。
だから、誰も気付かないと思ったの。
あたしが香水をつけてることに。
perfume of LOVE
「なんか、ちゃんいい匂いする」
そう言って、びくっとしたあたしをよそに嗅覚抜群の千石が顔をすり寄せてきた。
まわりの女のコたちのあまったるい匂いの中であたしの匂いに気付いたことも驚きだったけど、なによりも次の言葉。
「いつもこの匂いだよね。俺スキ」
鼻をすり寄せて、まるで犬みたいに。
ふわっとした笑顔できくなんてずるすぎる。
校舎の西側から差す光でさえ、したがえてしまうみたいに眩しい。
「どこの香水使ってんの?」
そう聞いておいて、『エンヴィじゃないし...ラッシュじゃないし...』とか考えてるのも千石らしいけど。
「千石は、ウルトラマリン愛用だね」
カバンから覗いてる見なれた青の液体。
あたしの部屋にも置いてあるその瓶が突然気になった。
「うん、夏はさウルトラマリンが一番あってる気がするんだよね...で、ちゃんの香水は?」
『結構前から気になってたんだけどさ〜、どこのかわかんなくて』と千石は苦笑いする。
「ブルガリ プールオム、メンズのだよ」
あたしの答えに、千石はちょっと目を細めた。
そして、目線を床に落として呟く。
「あぁ、そっか...メンズなんてちゃんらしいね。でも、メンズか〜〜〜」
ちょっぴり黙りこくって、ふいに顔をあげた千石はにかっと笑って聞いてきた。
「ね、ちゃん、ちゃん。俺も、ブルガリ プールオム愛用していい?」
それが、あたしと千石のはじまり。
きっと何万人も愛用してる中で、なんだかふたりだけの秘密みたいな気がしてちょっとくすぐったかった。
追記。
ただ、ブルガリ プールオムが素敵ってことをかきたかっただけ。
ちなみに、ブルガリ プールオムはlenさんも愛用。
男のひとは爽やかな匂いがすきみたいですよ。(だって、まわりからすんごい好評)
アナ スイとかよりも、ね。(でも、アナ スイもすき)
むしろ、香水ラブ。
2002.11.11