ねぇ、ちゃん。
キミに、オレの気持ちはいつ伝わるのでしょうか?
Heart Breaker**
スキな女のコがいる。
女のコだいすきを公言してやまないオレだけど、即ナンパ、デート、セックス当たり前のようにしてるけど、たったひとりだけ、手放せない女のコがいる。
ちゃん。
幼なじみの、そのせいでオレの気持ち本気にとってくれたことないけど。
なんかいも言うけど、キミがすき。
「ちゃん、オレとデートしよーよー」
見なれた教室の中、教卓を見据えるちゃんと向かい合わせ。
まわりのクラスメイトは、『またやってる』って冷たい視線おくるか『清純くんがんばれ〜』って応援してくれてる。
でも、たぶん誰もオレの本気には気付いてないけど。
当のちゃんは黙ったまんま、不機嫌そうに黒板を凝視してる。
「ヤダ」
一言だけ、ぶっきらぼうに放たれた声に、目にみえるくらいしょげてみせたらトモコちゃんが明るく声かけてきた。
「あはは〜〜〜〜〜千石。じゃぁ、あたしとデェトしよっか♪」
いつもなら、『うん』って返事ひとつで飛びつくとこ。だけど、今日は譲れないんだ、ゴメンね、トモコちゃん。
「ううん、いい。ちゃんがいい」
オレの言葉にトモコちゃんはおちゃらけて返事をくれる。
「ありゃ、ふられちゃったv〜〜〜、あんた千石と...って、どこ行くの?」
「...もう帰る」
ちゃんはいつのまにか手にカバンもって、ドアをくぐっていった。
オレは、慌てて支度して追いかけた。
だって、今日は特別な日だ。
クラスから、みんなの言葉が降ってきた。
「ばいばーい、千石。また明日ね〜〜〜〜」
帰りがけ、ちゃんの背を追いかけてたのに、女のコにつかまった。
ピンクの便箋にA4サイズの包み。
「センゴクセンパイ、おたんじょうびおめでとうございます」
かわいらしく、はにかむように笑ってくれたコ。
でも、でもね。
キミじゃダメなんだよ。
一年に一回の日だから、今日だけは。
ちゃんじゃないと、ダメなんだ。
「ゴメン、キミのプレゼント受け取れない」
ねぇ、小走りになっちゃうのは、ちゃんにすこしでも追い付きたいからなんだよ。
直線の、みえる位置にいないとダメなんだよ。
ホントは、となりがいいんだけどね。
冗談だって思ってるんでしょ、きっと。
世界中に叫べるくらいキミが好きなのに。
オレを楽しくすることは誰でもできるけど、オレを心臓止まるくらいドキドキさせたり、動揺させるのはキミしかいないんだ。
オレは、三メートルさきをいく、ちゃんに向かって叫んだ。
「ちゃ〜〜〜〜〜ん、ちゃんがすき〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
そしたら、ちゃん。
びくり止まって、ふり返って怒った。
「ちょっと叫ばないでよ、恥ずかしい!」
「だって、ちゃんがすきなんだもん。だから、付きあおv」
「ヤダ」
即答。
いくらの清純くんでもさすがにヘコむよ、ちゃん。
黙りこくったオレに歩き出したちゃんがぼろっとこぼした。
「でも、今日は特別な日だからね。...すきだよ、清純」
ふりかえってみせた笑顔の向こう、夕陽の橙をとかしてしまうくらいかわいかった。
しんぞうまひ、おこしそうなくらい。
...数秒、オレの時計の針は止まった。
「ほ、ホントに?ちゃん!」
思わず手ェのばしてぎゅってしたらにらまれた。
「やめろっつーの、さっきの言葉とりけすよ?」
どうやらオレのすきなコはオレより一枚上手みたい。
つーか、惚れた欲目?
追記。
ただ、ただ楽しかった。
おめでとう、清純くん。
これ続くかもしんない。
むしろ、楽しいv
あ、Heart Breaker**って心臓麻痺って意味よ。
失恋って意味のほうがしられてるけど。
むしろ、心臓麻痺起こしそうなくらいの恋って意味なんだけど。
2002.11.25