Love Again
精一杯、大事にしてもらったって思う。
跡部や忍足や万年女ズキみたいなヤツらの輪の中にあって(あ、でもジロちゃんは違うか、あれは女好きって言うより天然だ、きっと)アイツだけ噂なかったし。
浮ついてなかったし。(硬派とも言える)
そりゃ経験はあるだろうけど。
(だってあのテクニック、はじめてなんてありえない!)
それでも、そんなの気になんないくらい、愛してもらったって思ってる、アイツらしく好きでいてもらったって思う、いまでも。
だけど、だけど。
大好きだったけど、大切だったけど大事だったけど、限界だった。
心がもう悲鳴をとめられなかった。
気を緩めたらつかみかかりそうになってた、そんなのしたくなかったのに。
いつまでこうしてみてなきゃいけないの、どうして分かってくれないの。
応援にきたファンに、跡部みたく『うるせぇ』って言えない亮が嫌い、
照れくさそうな笑みもあの瞬間は嫌い。
イライラする。
私だって言いたいことたくさんあるのに。
あったのに。
今日の試合のどこがよかったとか鳳くんとのコンビネーションがピッタリだったねとか、伝えたいのに。
伝えたかったのに。
あたしは彼女なのに、ファンの次だった。
いつも、いつも。
一番目じゃないの?
亮の一番目じゃないの?
どうして皆に言ってくれないの?
ふりほどいてくれないの、言ってくれないの。
そんな風に、不満ばっかり溜まっていって好きよりもイライラが大きくなって言えなくてもうどうでもいいやって思うようになった。
『別れよう』って言ったとき、ウソじゃなくホントにすっきりしたの。
あぁ、もう何も気にしなくていいんだって。
ファンがどんな風に亮にまとわりつこうと私には関係ないんだからってそう思った。
なのに、どうしても目が離せない。
こんなにもみてる。
追いかけてる。
嫌なのに、みたくないのに、消えて欲しいのに。
忘れられない、考えてる。
気付いたら、あの世界一嫌いだったテニス部の部室の前で亮を待ってた。
あいたかった、話したかった、言いたかった、聞いて欲しかった。
「亮」
まっすぐ前をみすえながら近付いてきた亮に声をかける、もしかしたらふるえているかもしれない。
約一月ぶりにつきあわせた亮の顔はおどろいていた。
かわらないのは、シンボルマークのばんそうこうだけ。
「...?」
何か言いかけた亮の言葉を遮って口を開く。
拒絶よりも、先に言いたかった、伝えたかった。
「亮、わたしとやり直してくれる?」
空気に溶けた音が、耳に届いたことを亮の表情が伝えた。
瞳がまっすぐ私をみつめる。
目が離せなかった。
そして、亮は帽子を被り直しながら答えてくれた。
「あぁ」
ごく自然に瞳があった。
笑った、ふたりして笑った。
また、あの日々が戻ってきた。
追記**
image song globe『Love again』
UP DATE.2003.08.24