The  Zodiac  Brave  Story   CHAPTER 1 持たざる者。






英雄王エイシの名が、はじめて登場するのは獅子戦争の一年前。
マツシタ公が統治するイグーロスのお膝元、魔法都市ガリオンヌに在する王立アカデミーでエイシとショウは士官候補生として学んでいた。

折しもイヴァリースは、五十年戦争の敗北によって全土において盗み・殺人が日常茶飯事におこるような有り様であった。
そんな頃、卒業間近の士官候補生たちが講堂に呼び出された。
拾集をかけたのは、いつもの学び舎の教師達では無い。

イヴァーリスの中でも最高の実力を誇る、イグーロス守護の任務についている北天騎士団であった。

北天騎士団が直々に王立アカデミーに出向くのはとても珍しいことである。

困惑気味の表情のショウも当然、エイシとともに講堂にいた。

「僕たちに一体何だろうね、エイシ。知ってる?」

高鳴る鼓動を押さえ切れず、隣に並ぶエイシに問いかけた。

エイシをみるとやはりエイシも緊張の面持ちをしている。

「いや...ただ、ある程度の予想はつくが...」

ショウはエイシの言葉に耳を傾ける。

「マツシタ公がこの町においでになる」

エイシの淡々とした喋り口にショウの困惑は増すばかりだ。

「マツシタ公が...?どうして?」

確かにガリオンヌはマツシタ公の統治する領地内である。
しかし、危険なばかりの領地をいまこの時期に視察する必要がどこにあるのだろう。
イグーロスから出ることの方がよっぽど危険にさらされるはずだ。

困惑のショウに、エイシは更に困惑する言葉を投げかけた。

「マツシタ公だけじゃない。ランベリーの領主、ミカミ侯爵もだ」

ミカミ侯爵。
先の五十年戦争においては雷神カツロウと共に恐れられた人物である。
銀色の髪をなびかせて剣を取り戦うさまは、銀髪鬼として敵におそれられ、恐怖をもたらした。
そんなミカミ侯爵がガリオンヌに、マツシタ公と一緒に赴いてくる。
政治的策略を感じ取ったショウは、エイシに確認するように聞いた。


「それは初耳だ。...公式訪問じゃないな」

それを肯定するように、エイシは淡々と言葉を繋ぐ。

「今のイヴァリースはどこもかしこも危険地帯ばかりだ。騎士団は八面六臂の大活躍だが、実際には人手が足りない...」

「で、僕たち士官候補生ってわけか」

ショウは事情が飲み込めたとばかりに大きくうなずく。


「一同、整列!」

騎士団の騎士が講堂の教卓の前にたつ。

「諸君、任務である」

騎士の声だけが講堂内部に響く。
他の士官候補生たちもみじろぎひとつすることなく、騎士の言葉に耳を傾けた。

「昨今このガリオンヌの地には野蛮極まりない輩どもが急増している。中でも骸旅団(むくろりょだん)は王家に仇をなす不忠の者ども。見過ごすことの出来ぬ盗賊だ。我々北天騎士団は君命により骸旅団壊滅作戦を開始する。この作戦は大規模な作戦である。北天騎士団に限らず、イグーロスに駐留するマツシタ閣下の近衛騎士団など多くの騎士団が参加する作戦だ。諸君らの任務は後方支援である。具体的には、手薄となるイグーロスに赴き、警護の任についてもらいたい」

騎士の説明が終わったとき、女で別の騎士が入ってきて、説明をしてくれた騎士になにか囁いた。
騎士は再び口を開くと、告げた。

「士官候補生の諸君、装備を固め剣を手に取るがいい。北天騎士団によって撃破された盗賊の一味がこの町へ逃げ込もうとしているとの連絡を受けた。我々はこれより町に潜入する奴らの掃討を開始する!諸君らも同行したまえ!これは、せん滅作戦の前哨戦である!以上だ!ただちに準備にかかれ!」

そして、僕らはガリオンヌに逃げてきた盗賊たちと戦ったんだ。

それは、僕らにとって、はじめての実戦だった。

そう、僕と...エイシにとってはじめての。

身分を意識させる戦いだったんだ。