僕らは、いくどかの戦闘をくぐり抜け、兄たちのいるイグーロス城に辿り着いた。
その足で、長兄タキに謁見を申し出る。
僕と兄が兄弟なのを知っている騎士は僕を兄の執務室に通してくれた。
兄はあうなり、僕の戦いぶりを誉めてくれた。
「...ありがとうございます」
その言葉の歯切れの悪さから兄は何かを読み取ったのか言葉をなげかけた。
「なんだ、嬉しくないのか?」
僕は、兄の言葉に慌てて訂正すると、ぎくしゃくした雰囲気を取り払うように本題に入った。
「...報告があったと思いますが、ミカミ候の馬車が襲われ、誘拐されたとのこと。いかがないさいますか?」
兄は僕の言葉にすぐさま言葉を返してきた。
長兄のタキは、いつ会っても冷静で何事にも動じない人だった。
「うむ、トシキに捜索隊を出すようすでに手を打ってある。また、いずれ、やつらから身代金の要求もあろう。...侯爵様が生きておいでならばな」
と、兄の言葉が終わるか終わらないかのうちにユンギュンが頭を下げた。
「お願いします。ベオルブ閣下。何卒、私に百の兵をお与えください!!」
兄は黙ったまま、ユンギュンをみた。
ユンギュンは再度懇願する。
殺された者たちの仇を打ちたいと食い下がる、しかし、タキは一言ユンギュンに言い放った。
「手を打ったと申しておる。それがわからぬわけではあるまい。ここは貴公が住む土地ではない。ガリオンヌのことは我々に任せておくことだ」
兄の言葉はもっともらしい、上に立つものの言葉だった。
ユンギュンはなおも食い下がる。
が、タキはユンギュンに一瞥をくれると今度こそ、言い放った。
「身分をわきまえぬか、ユンギュン殿。貴公は騎士の称号も持たぬ、一兵卒であることを忘れておいでか?」
ユンギュンはその言葉にやっと口を閉ざした。
僕は、ユンギュンの気持ちが分からないわけではない、しかし、この場所においては兄の指示に従うのが適格だと思われた。
兄は、僕らに城の身辺警護の任を与えた。
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