王子 VS 店長




そして一方、店の前では自らを王子と名乗る三上がやってきていた。

店の看板よりも高くかかげられたたれまくをみる。

『ダブルチャレンジ&サイバードラゴン10台ずつ入荷!!1から6までのオール設定投入』

タバコをくゆらしながら店が開くのを待っている。と、そこになぜかいつもくっついてくるホクロこと藤代がやってきた。

「この店には近づかないといいながら一番乗りじゃないスか」

「やる気マンマンスね」

「この店のナゾが解けたとか?」

朝も早いこの時間帯から全くよくしゃべるオトコである。

三上は藤代の言葉に舌打ちをする。

「ケッ、そんなんじゃねェ」

三上の表情にはいつものニヤニヤスマイルすら見られない、爆発前の富士山のようだ。

「怒りだ」

語尾も荒く、前回のイベントでよほどいらついたのだろう、その表情は未だ渋っている。

藤代はそんな三上の気配にヒキ気味ながらも言葉を返した。

「怒りって...?」

もはや三上の怒りのために藤代の言葉は独り言に近いものがある。が、それでも三上は藤代の問いかけに答えた。

「何しろ設定は読めんわ、アドリブも効きにくいわ。獣王では勝ったが、ありゃたまたま」

自分のアドリブ力を心底信じる三上にとってイベントの勝利はプライドのかたまり。
そんな三上が自分の勝利をたまたまと言い切ったのだから相当な悔しさなのであろう。

三上は吐き捨てるように続ける。

「全くムカつく店だ...」

では、なんでまたロマンスにやってきたのだろう。

獣王イベント以来絶対近付かないと豪語していた店だ。

藤代が口を開くよりも早く、三上はその理由をはなしはじめた。

「ムカつくが今回は別...サイバードラゴン、ダブルチャレンジの同時新装...。しかも今回はオール設定、データもとれる」

「まさにこの夏最大のイベントだ」

イベント狙いのスロプロをしている三上にとっては、絶対に外せないイベントだったのだ。

そう、どんなにその店が勝ちにくい店でも。

三上はニヤニヤスマイルを取り戻すと、瞳を光らせた。

「どーもココの店長に踊らされてるようで頭に来るが...今回...我に秘策アリ」

その笑みからしても、随分自信があるようだ。

波に乗った三上の力が異常なほどなのをホクロは思い出して、ちょっと震えた。

「ひ秘策っスか」

三上はその綺麗な黒い瞳を閉じると、陶酔したように言葉を放つ。

「こりゃココの店長も思いも寄らんだろうよ」

「まず朝一で突入し...!?」

クックックッと不気味な笑いを響かせて、その正面玄関をみると人が。

その笑いも一瞬でたち消えた。

ロマンスの社員、プレートには若菜と書かれたオトコがたっている。

藤代もその一瞬の出現に驚いているようだ。

「な何スか。こいつ...」