オレたちはいつでも誰かをさがしてるんだ。
prayer.11
_____玄関のドアが開く音がした。
こんな時間にくるのは、決して親父や母親なんかじゃない。
遊び相手も全部切った今となっては歩いてくるその音をたててくれるのは、仲間をのぞいては一人しかいないはずだ。
...。
オレが立ちあがるのとリビングのドアが開いたのは、ほど同時だった。
「なにしてんの?跡部?」
浮きあがらせた身体にが開口一番けらけらと笑う。
いつもと同じ様子の。
オレは、あせる気持ちに水をさされたようで照れ隠しにぶっきらぼうに言った。
「バッカ、なんでもねぇよ。コーヒー煎れようと思っただけだっつーの」
その言葉に先に動いたのはだった。
「あ、じゃぁあたしが煎れるよ。跡部座ってなよ」
キッチンでがちゃがちゃとカップを手にとるの後ろ姿をみながら考えていた。
はどうしてココにきたんだろう。
単純に考えれば戻ってきた。
それしか、ない。
でも、もしかしたら。
別れをつげるために来たのかも知れない。
宍戸のところにいきたいって言いに来たのかも知れない。
否定出来ない気持ちが、一瞬光が射した心を再び暗くした。
「ねぇ、跡部。聞きたいこと、あるんじゃないの?」
急に、響いてきた言葉に思わず身をかたくする。
あきらめのような、一線をかくした気持ちが広がっていく。
「...あぁ」
広い空間が急に重苦しくなっていった。
オレももしゃべらない。
はずっと背を向けたままだ。
...しばらくの沈黙のあと、先にが口をひらいた。
「......あたしから言うね。きっと跡部ききづらいだろうから...」
がふりかえる、同時にオレは目を合わせづらくて瞳を伏せた。
「あたし、亮とエッチしたよ。それで自分の気持ち、分かった、あたし、亮とエッチしたとき、すんごく素直になれた。『すき』って言えた
...どくんと心臓が危険信号を発してる。
のどが異常なスピードでかわいていく。
声だけが部屋を侵食する。
「でも、ソレはいまの『すき』じゃない。いままで十年分の『すき』だから。エッチしてもなにも感じなかった。...跡部のこと、考えてた...」
コトンとサイドテーブルにマグカップが置かれた。
立ち上がる湯気がまるで意味をなさないように部屋が冷えていく。
「今のあたしの中には跡部への『スキ』しかない。跡部がどうしてあたしに亮とエッチしろっていったのかは全然わかんない。だけど
手が急に熱をおびた。
が右手を握りしめてた。
「あたしには景吾のこの指先がすごくやさしいってことだけは分かる...
気付けば、オレは身体ごとをだきしめていた。
宍戸がとヤったとかもうどうでもよかった。
がオレを必要としてる、それだけで十分だった。
「...あ...跡部...?」
がビックリしたのか身をよじった。
オレはさらにぎゅっとだきしめた。
「もう離さねぇ...2度と離さねぇ
それはずっと言い出せなかった言葉。
オレは一年以上隠し通した気持ちをに伝えた__________
お前がすきだ。
△/▽
追記**
prayer.完成。
ラブラブのシーンはあえて書きませんでした。
なんか宍戸あんまり目立ってないとか言わないでください。
でもまぁ、補佐的要素で書いたのでまぁまぁ、かなぁ。
こっぱずかしいこといっちゃうと、跡部もprayerだったってことなんですけどね。
宍戸視点も書きかったけど。
image song globe 『seize the light』
up date:2002.12.03