病的だとか、危険だとかそんなことなんて関係なかった。
何を言われても良くて。
すべては君に繋がって、君の望みで。


だから、泣くことはないと、君は俺をみて笑ってくれるだろう。

十分だよと言うんだろう。










snow flower**.01














真っ白の、床につくくらい長いワンピースが窓から吹き荒れる風でさらりと揺れた。

生きているのは、まるでそれだけのようにただ静かに、息をしているようだった。

途端にその静寂を破って、急き立てるような息遣いがドレスと同じ白い表情からこぼれた。

跡部は慌てて、その咳の出所となった人物の背を撫でる。


、大丈夫か」


と呼ばれた少女は、跡部の優しい問いかけに白い表情のまま弱々しい笑みでうなづいた。
跡部はそれでもの背を撫で続け、ベッドに彼女を横たえたあと空気入れ替えのために開け放たれた窓を閉めた。

部屋はまた、なんの音もしない静かな世界へと巻き戻った。

はそんな世界を消えさせた、窓を恨めしそうに眺め聞こえるか聞こえないかの囁きを漏らす。

「空気の音、もっと聞きたかったのに...」

「良くなれば、外で十分聞けるだろ」

楽しみは後にとっとけよ、そう返して跡部は窓に視線を向けたままのをみつめた。
以前に比べ、一段と白くなってしまった肌。

それはいかにも死を暗示させる色合いで、跡部は過っていった考えを頭を振ることで消した。

跡部とは、両親が仲良しの間柄なため小さな頃から一緒にいた。
物心つくころから出席するように言われたパーティーでも、小さいながらブランドのタキシードで決めた偉そうな跡部の傍にはピンク色のかわいらしいドレスを着たおしゃまながいて、それは付属の幼稚舎から小学校にあがっても中学校にあがっても変わらなかった。


が赤い海を作り出してしまうまでは。


そして、跡部の横からはの笑顔が消え大きな箱の中に閉じ込められてしまった。


いまにあえるのは、この許された広くて狭い場所の中だけ。

跡部は一年も風雨に曝されていない手を握ってに笑った。
それは、いままで誰もみたことがないほど柔らかな笑みだった。
無意識のうちに向き合わされた瞳から、の不安そうな色が覗く。
そんなに跡部は無敵の表情で言葉を紡いだ。

「なに、そんな怯えた顔してんだよ」

だって、景吾...と、漏れた呟きをかき消して跡部は願望でしかない気持ちを伝えた。

「お前は良くなって、19の誕生日に俺から指輪貰うんだろ?」

小学校の頃、作文に書き起こした言葉を用いて、跡部は手を握りしめた。
そんな顔じゃ、やれねぇぞ。と脅しつきの声に、固い表情だったがやっと人間の表情のように優しく笑った。

「約束したんだから今更取り消しは、なしだよ」

いたづらっぽい笑顔に変わった彼女に、跡部は安心してストレートのアッシュがかった髪をくしゃくしゃっと撫でた。



跡部は本気で願っていた、その世界が変わることなく続くことを。
が変わらず笑うことを。














△/



追記**


lenってば、何個連載する気なのつーくらい書いてるよね。
あはは。
でも、許してよね。
これ、すっごい頭の中で組み立ててるうちに涙出て来ちゃってね。
どこでも、ありそうな感じだけどlenテイストは忘れずにいきたいです。
題名は冬をイメージしたんだけどね、でもいま夏だし、暦上では秋だけどね。

image song  元ちとせ『この街』
xenosaga『sweet song』



up date:2003.09.04