暗闇の中に小さな星だけがキラリ輝いていた。










snow flower**.02














それからの日々は変わりなく過ぎていくように思えた。
の部屋からみえる庭の木々が、青々とした緑の葉から赤い色の紅葉に変わっても寒さから木の葉が舞い落ちる時期になっても、何も変わらない時を刻んでいると思っていた。

ゆっくり静かに、その間もは悪くなっていたのに。

きっと、たぶん跡部はそれを知っているのをごまかしたくて陶磁器のように白いの指を撫でたのだった。
気付かぬうちに。

かける言葉すら思い付かずに。

けれど、熱くたぎっているへの思いを伝えたくて。




知らぬ間に、支えただけだった指を強く握り過ぎていたのだろう。


控えめな、雪のようなしんしんとした声がだだっ広い部屋の中に空気のように溶けた。

「痛いよ...景吾」

跡部は、はっとして視線をに戻した。
慌てて握りしめていた指を離し、悪いなと声をかけふいに泣きたくなる。

もともと細かったの身体が骨と皮だけのようになって、見る影もなくなっていたからだった。
笑みを絶やさぬその表情も、痩せこけ跡部の気持ちを追い詰めていく。


もう、長くない。



愛しい少女が消えてしまう。
それが分かっても現実として形になって突き付けられても跡部はを離したくなかった。
受け入れたくなかった。
に生きていて欲しいと思った。

部屋の隅に置かれた父親からの誕生日プレゼントの白いグランドピアノを弾いていた、
長く細い指をなぞる。



この四番目の指にぎんいろを。

約束していた指輪を。

はめてあげたい。



込み上げてくるもろもろの気持ちを抑えて、跡部はにさよならを告げた。
もう、外は闇が下りてヒカリを消している。
そろそろ戻らなければ、跡部がいくら男といえど両親は心配するだろう。






「ん、おやすみ」






そう言って大きなベッドの上から見送ってくれたに、跡部は唯一できる約束を残して扉を閉めた。





「明日も来るからな」




未来の見えない跡部にとってそれだけがにしてあげられる、唯一守ってあげられる、確実に言ってあげられる言葉だった。















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追記**


やっぱり01の出だしのスピード感と言うか悲愴感にはかなわない感じ、しますね。
っていうか、これ決着つくのかな...。
エンディングはみえてるし、山場もしっかり見据えてるんだけどね。
間のクッションにてこづってる感じしますね。
だって、どうやってイベントっていうか書きたい項目にもってったらいいか、いま脳が上手く動いてないらしくいいアイディアが浮かばない。
ということで、このへんでシャーロット・マクラウド世界に逃避します。
でも、跡部が純だよね、アハ。


image song  元ちとせ『この街』
xenosaga『sweet song』


up date:2003.09.05