繋がった、証拠が欲しかっただけかもしれない。

終いえてしまっても心に留めておきたかったからかもしれない。

それよりも、ただ一番に笑顔がみたかったからなのに。











snow flower**.03














数日後、跡部は相変わらず雪花の部屋で過ごしていた。
窓から吹く風が今日も、白いカーテンをなびかせている。
その美しい光景をスル−して、窓の外で風を受けて揺れる大木の葉を眺める
壊れて散ってしまうものに向ける愛おしそうな視線を跡部も追い、みつめた。

「ねぇ、景吾。風を感じられることって素晴らしいね」

だって、私はみることしかできないのにあの葉っぱたちは一枚一枚空気によって動いてるんだよ?すごいと思わない?と、問うたの表情は寂しげで、それでいてうらやましそうで。

跡部は用意していた言葉が喉にからまってでてこなくなるのをかんじた。

だって風感じること出来るんだぞ』

お前だってあの葉っぱたちと同じように生きてるんだよ。

そう言いたかったのに、間違ってない答えなのに。
浴びた風はきっと心地よい爽やかさより、身体を冷やす悪薬にしかなり得なくて。

跡部はそれを痛いほど悟って、話題を逸らすため声を急がせた。

、そう言えば俺今日渡したいもの持って来てたんだ」

「えー?何?」

珍しく元気で嬉しそうなの声が部屋中に響いて、跡部もつられたように笑顔になった。
制服のポケットを軽く押え、今朝執事から受け取ったばかりのそれの感触をたしかめる。


が消えてしまうことを悟ってしまった、あの日。
慌てて両親に話して、指輪を作ってもらった。

どうしても、の笑ってくれる顔がみたかった。

希望を持っていて欲しかった。



跡部は、に目を閉じるように伝え小さな真四角の箱を取り出した。
念入りに閉じられているのを確認して、右手を触る。

細い四番目の指に、銀の指輪をおさめその手にキスをする。
瞬間、びっくりしたの瞳が開いて唇が落とされた右手をみつめた。


喜んでもらえると思てた。
ありがとうって笑ってくれると思った。

なのに、は認識した瞬間に薬指から指輪を抜いて投げ捨てた。
カランと鈍い音をたてて、塵ひとつ落ちてないフローリングが占拠される。


...

跡部にはどうしてかわからなかった。
かけた名前に、は首をぶんぶんと振りわめいた。


「いらない!!!こんなのいらない!!欲しくなんかない!!私19の誕生日に貰うって言ったじゃない!!今欲しいなんて言ってないじゃない!!」


帰ってよ...!帰ってってば!!
その声に押されるように、跡部はのろのろと椅子から立ち上がりフローリングに投げ付けられた指輪を拾って呟いた。

「...それでも俺は渡したかったんだ。につけて欲しかったんだ...今日は帰る...また来るな...」

跡部は、そのまま扉を開いて部屋を後にした。
廊下には、さきほどのの声を聞き付けた執事が呼んだのだろうの両親が心配そうな表情をしてたっていた。

「景吾くん...」

それ以上言えないの母親に笑いかけ伝える。

「指輪を、渡したんですけど・・・受け取って貰えませんでした」

欲しくないって言われました。
自嘲気味の笑みにの母親の隣で見守るように佇んでいたの父親が肩を支えてくれた。

「悪かったね...景吾くん...あの子はいま自分が病気に負けそうだと悟ってしまって押さえられないんだよ」

その言葉に、跡部は首を振って控えめに笑った。

「しょうがないですよ...僕が悪いんです。の気持ちを考えなかった俺が、悪いんです」

おじぎをして二人の前を後にした。


手に冷たい銀の感触だけがこびりついて離れなかった。















/▽



追記**


の行動は痛いくらい分かるんですよね。
そして跡部が指輪をあげたことも。
でも、どっちかと言えば気持ち的には跡部よりです。



image song  元ちとせ『この街』
xenosaga『sweet song』


up date:2003.09.27