ナミダが溢れるより、愕然としたの。

気付いた私の気持ちを取り壊すような無情の声。

握りしめた指が震えて、力をいれ過ぎた指先がナミダを流した。

赤い、その涙。







guadian  force  01







それは、エイシと旅をはじめて3つめにあたる、雷鳴轟くジョゼエボン寺院の祈り子様を手にいれたあとの、僧侶との何気ない会話だった。

みあげた広間に大きな石像が4つ。
ちょっと先では、エイシが次の寺院のことで僧侶と話をしていた。

大召喚士と呼ばれる『シン』を倒した歴代の召喚士たちのそれにスピラ特有の挨拶をして、顔をあげると後ろから声がした。

「お父さまとお母さまは立派でございましたね、様」

ふりかえると、寺院の年老いた僧侶がエボンの挨拶をしてほほえんだ。

「はい、ありがとうございます」

挨拶を返して、礼を言う。
は、旅をして行く中で自分の知らない父親と母親の話を聞くのが楽しみだった。
そして、誉められるのが嬉しかった。
スピラの為に、シンと向き合ったふたり。
最後の日、旅立つふたりを桟橋まで追いかけたことが頭を過る。

あの日は、離ればなれになってしまうことよりも。
自分の両親がスピラを救うために旅立とうとしている誇らしさのほうが何倍も大きかっ
た。

だから、満面の笑みで振られた手。
振りかえされた手。


そして、三ヶ月後。

シンを倒したお祝いのパレードを迎えても、その日を超えても。
父親と母親は帰ってこなかった。

寺院の大人は、ふたりが流行り病にかかってあえないという話をしてをなだめた。
はその言葉を信じ、待ち続けた。
そして次のときふたりは他界したと告げられた。


「あのひより、もうどのくらいたちますかな...」

老僧侶が父親であるウィルの石像を細い目でみつめた。

「たしか、もう10年は過ぎてると思いますけど」

の言葉に、老僧侶は記憶を辿るように天井を仰いだ。

「ウィル様とティア様がいらしたのは、もうそんな前になるのですね...若く、希望に燃えていたふたり...いまでも思い出します、その門をくぐってカツロウ様と三人で、まだ幼いあなたのことを楽しそうに話していました。ウィル様もティア様もほんとうに、嬉しそうだった...もうすぐ、死んでしまうことが分かっているはずなのに...」

老僧侶の言葉の意図が理解出来なかった。

「死ぬって...」

僧侶はそのときはじめて、震えた声で言葉を返したサクヒを真正面からみつめた。

「さぞかし、お辛かったでしょう...サクヒ様。運命(さだめ)とはいえ、シンを倒すことでお父さまは天に召されてしまったのですから...そして、お母さまも後を追うように亡くなられてしまった...まだ幼いあなたには一人で抱え切れない重圧だったでしょう」

老僧侶のしわだらけの手が伸びてきて、髪に触れた。

「...あなたは強い人だ。エイシ様の死をも受け入れる覚悟をお持ちだとは...」

その、老僧侶の言葉に心臓が激しく警笛を鳴らした。

エイシが死んでしまう...。
シンを倒すことによって...。

そんなの、嫌。
やっと、分かったばかりなのに...。

エイシが好きだって、認識したばかりなのに。

エイシの笑顔をみていたくて、旅を一緒にしてきたのに。

ふたりで続ける旅の終着駅が、エイシの死に繋がってるなんて...。


そんなの、絶対に嫌。



ナミダが溢れるより、愕然としたの。

気付いた私の気持ちを取り壊すような無情の声。

握りしめた指が震えて、力をいれ過ぎた指先がナミダを流した。

赤い、その涙。

それには、誰も気付かなかった。














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2002.09.30