ねぇ、アンタの影を切り取ってあたしにちょうだい。

そしたら、あたし。

アンタだけだって言える。












prayer.08
















それは突然、かわいた空から雪が降るように静かに降ちてきた。


やさしいおとをたてて。


テニス部恒例のシングルス戦、ちょうど亮と向日の試合が白熱してきたあたりだった。

空からは、さんさんと太陽の光が降り注いで二人の試合をあたしたちと同じように見守っている。

あたしのとなりには跡部。
その一列後ろには樺地。

少しはなれて忍足と鳳が緊張の面持ちで互いのパートナー同士の戦いに魅入っている。


三年寝太郎のジローちゃんはその後ろでやっぱりぐーすか、ぐーすか寝ている。




もしかしたら、誰にも聞かれたくないから、あんな時に言ったのかも知れないと思う。


「宍戸のとこにいきてぇんじゃねーのか」

ふいに、こぼれた言葉。


ひどいよ、跡部はいつでもそうやってあたしに選択させる。
あたしがここにいたいっておもいはじめた頃にいたいところついてくる。



それは、あの日以来はじめての跡部からの問いかけだった。


思わず握りしめた手が、痛い。熱い。



「ここにいないほうがいい...?」



2週間となりにいて、いつ言われるかいつ言われるかってビクビクしてた。
でも、なにも言い出さないから跡部が。

あたしは知らず知らずこの場所が心地いいって思いはじめてたんだ。

思うようになってたんだ。


「別に...オレには関係ねーからな」

跡部から放たれたなんでもないはずの言葉がするどくあたしの胸をさす。

いたい。

えぐられるようにいたい。




関係ないなんて言わないでよ。

あたしにはもうこの場所しかないんだ。

もう、跡部の、アンタのそばしかないんだ。





「お前がいたいだけここにいればいい。オレの隣は、あけといてやる」


その意外な言葉にびっくりして、となりの跡部に視線をうつした。


跡部はずっと亮をみていた。

まばたきさえせずに。


ふるえた喉で、息を思いっきり吸った。





「...じゃぁ、ずっととなりにいる」





聞こえるか、聞こえないかの声に跡部はやっぱり視線を外すことなく答えた。




声は、とおくそらのかなたまでひろがって、はじけてやさしくとけた。





「あぁ、そうしろ」
























/



追記**



三度も書き直したダメダメ8話。
物語のおおきなコンセプトは『願い』でした。
ちなみに、prayerというのは祈りという意味ですがlenはpray自体に『願い・テニス
プレイヤー(player)プレイボーイ』という意味を込めていました。(えぇ、単語違
いってのは分かっててやってたんですよ)
今回のドリーム、三人のlen的なイメージみたいなものでしょうか。
あと、+?というか続きの三人の話も用意してます。
あ〜〜〜〜〜、でもかけてよかったよv




image song  globe 『seize the light』


up date:2002.11.26